2-2.シィーラの刃

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 気持ちは分かるがそういうわけにもいかない。  シュリンには隙が少なすぎる。反撃するとしたらどうしてもその少ない隙を突くことになってしまう。それがリクラムが反撃できないもう一つの理由だった。  リクラムの戦闘スタイルはあくまで実戦向きだ。最小限の動きで隙を作らず、そして相手の力や、重力や慣性などの自然法則の力を利用した戦い方をする。  今シュリンに反撃するとしたら、攻撃に入る直前あるいは直後に打撃系の技を放り込むしかない。いきなり投げ技や絞め技に入る隙がシュリンにはないのだ。 (……できたとしても女の子相手に絞め技はないな)  再び本来の戦い方に戻して連打を仕掛けてくるシュリンを見ながら、リクラムは思った。 (あ……、今も一発くらいなら放りこめたな)  しかしこのタイミングではやはりだめなのだ。なぜなら加減ができない。シュリンの隙を突こうと思ったらそれなりの速さが求められるし、なにより攻撃してくる相手に攻撃を返さなければならないことが問題だった。  攻撃途中の相手に打撃をすると、相手の力まで上乗せした威力を相手にぶつけることになってしまう。止まっている人にぶつかるよりも、互いに向かって進みながらぶつかった方が威力が大きくなるのと同じだ。  それはさすがにまずい。シュリンは速く、切れの良い動きをしているからなおさらだ。上手くやれば、攻撃中のシュリンの進行方向に拳を置いておくだけでもかなりのダメージを与えられそうだった。
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