2-2.シィーラの刃

9/30
前へ
/313ページ
次へ
 となると、リクラムが思いつく対応策は二つだ。  一つはシュリンが体力的、精神的に崩れるまでこのまま避け続けること。隙が大きくなったところで怪我をさせないように反撃すれば良い。現に今もシュリンの調子は徐々に崩れてきている。攻撃の当たらないいらいらと、リクラムに対する不満がそれを加速させているようだった。 (……でもこれ絶対怒るよな)  どう考えても相手を小馬鹿にした作戦だ。これでは後が怖い。  わざと負けるという手もあるのだが、なんとなくそれは嫌だった。シュリンが怒るであろうことは火を見るよりも明らかだし、リクラムにだってプライドはある。得意分野でシュリンに負けたくはなかった。なにより、体術で負けたら自分の存在意義など無いように思われた。 (仕方ないな)  リクラムはもう一つの対応策をとることを決心した。これもシュリンの反感を買うだろうが、今思いつく中では最善のように思う。  シュリンの蹴りを最小限の動きで躱す。と同時にその引き足に合わせてシュリンの懐に飛び込む。  シュリンが驚いた表情を見せた。  リクラムはシュリンの動きを見極める。全体の体勢と動きから重心を読むのだ。  シュリンの重心が片足に集まったところで、リクラムはその膝裏を踵で軽く叩いた。 「へ?」  シュリンが間の抜けた声を零した。  軽く小突かれただけなのにシュリンの体勢が一気に崩れる。体中の力が抜けたかのように床に向かって沈んでいく。
/313ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3340人が本棚に入れています
本棚に追加