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となると、リクラムが思いつく対応策は二つだ。
一つはシュリンが体力的、精神的に崩れるまでこのまま避け続けること。隙が大きくなったところで怪我をさせないように反撃すれば良い。現に今もシュリンの調子は徐々に崩れてきている。攻撃の当たらないいらいらと、リクラムに対する不満がそれを加速させているようだった。
(……でもこれ絶対怒るよな)
どう考えても相手を小馬鹿にした作戦だ。これでは後が怖い。
わざと負けるという手もあるのだが、なんとなくそれは嫌だった。シュリンが怒るであろうことは火を見るよりも明らかだし、リクラムにだってプライドはある。得意分野でシュリンに負けたくはなかった。なにより、体術で負けたら自分の存在意義など無いように思われた。
(仕方ないな)
リクラムはもう一つの対応策をとることを決心した。これもシュリンの反感を買うだろうが、今思いつく中では最善のように思う。
シュリンの蹴りを最小限の動きで躱す。と同時にその引き足に合わせてシュリンの懐に飛び込む。
シュリンが驚いた表情を見せた。
リクラムはシュリンの動きを見極める。全体の体勢と動きから重心を読むのだ。
シュリンの重心が片足に集まったところで、リクラムはその膝裏を踵で軽く叩いた。
「へ?」
シュリンが間の抜けた声を零した。
軽く小突かれただけなのにシュリンの体勢が一気に崩れる。体中の力が抜けたかのように床に向かって沈んでいく。
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