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リクラムはシュリンを引っ張り上げて立たせた。
「にしても驚いたよ。シュリンがあんなに動けるとは思っていなかった」
「小さい頃から兄さんとお父さんに仕込まれてるからね。……まあ、肉体強化使えないからあんまり意味は無いんだけどね」
最初は少し誇らしげにしていたシュリンだったが、言葉の最後の方には自嘲するような言い方に変わっていた。なんでもできるシュリンにとっては肉体強化だけできないというのはコンプレックスなのかもしれない。
「そっち方面は僕が頑張るから問題ないよ。パートナー、でしょ?」
リクラムは何か言ってあげたくて、思ったことを素直に口にしてみた。リクラムにとっての唯一無二が、シュリンにとってはたった一つの弱点なのだから、二人でなら完璧ではないか。
シュリンは一瞬きょとんとしたが、すぐさま「そうだね」と破顔した。つられて、リクラムも表情を緩める。
しばらく和やかな雰囲気が続いた。しかしシュリンの瞳に、ふと悪戯な光が灯った。
「でも、ちょっと手を抜きすぎじゃないかな? あそこまで虚仮にされるとさすがに傷つくんだけど」
先ほどとは一転し、シュリンは拗ねたように言った。
やっぱりそうなるか、とリクラムは思ったがシュリンが本気で怒っているのではないことは分かったため、それに関しては胸をなでおろした。ささやかな仕返しのつもりなのだろう。
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