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「ごめん……」
「悪いとは思ってるみたいだけど、もう一回やったら同じことするでしょ?」
「う……」
素直に謝ったリクラムだったが、シュリンに図星を突かれて言葉に詰まった。確かにあれ以上の方法は今のリクラムには思いつかない。
「……もっと強くなるよ」
リクラムは少し考えてから、そう呟いた。
実力が足りないから、ああするしかなかったのだ。もっと強くなれば選択の幅も広がるだろう。結局手加減はするということになるが、それは自力に差があるのだから仕方のないことだ。
リクラムは質問の返答としては不相応だと思いつつ言ったのだが、シュリンはリクラムの言わんとするところを理解したようだった。
「まったく。優しいんだから」
目を細めながらそう言うと、シュリンはリクラムの頭を乱暴に撫でた。その顔からは笑みが零れていて、やはり本気で怒っていたわけではないようだ。
リクラムは抵抗するそぶりは見せるが、シュリンの手を本気で振り払うようなことはしなかった。同い年の女の子に頭を撫でられるというのは恥ずかしい気もしたが、どこか嬉しくもあった。
互いにじゃれあうような温かな時が過ぎていく中、
――にゃあ
間延びした鳴き声が訓練室に響いた。
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