2-2.シィーラの刃

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 水針。  猫が着地する間際、シュリンの魔法が猫を襲った。リクラムには当たらないよう細心の注意が払われた、超高圧の雨が猫に降り注ぐ。  完璧なタイミングだった。  猫が着地した瞬間には死を呼び込む雨がその体に迫っていた。  しかし、猫は驚くべき瞬発力で横っ飛びしてそれを躱してしまった。  強固な床は水針を受けても傷一つ付くことなく、水たまりができた。 (シュリン、容赦ないな……) 横っ飛びした猫を追撃しながらリクラムは思った。今の魔法は明らかに息の根を止めに行っていた。そしてそれが正しいのだろう。しかしリクラムは卑劣に徹しきれないでいた。それはリクラムの優しさの表れであり、甘さでもあった。  リクラムは拳や蹴りを次々と繰り出していくが、身軽な猫はひょいひょいとそれを避けていく。 長期戦になるかとリクラムが思った直後、変化が訪れた。猫の尻尾の先が変色し出したのだ。白銀色が段々と黒ずんでいき、その形も変わっていく。生物的な丸みが失われ、硬質化していく。  現れたのは漆黒の刃だった。ナイフの刃が尻尾の先で鋭く光る。 (やっぱり仞獣か?)  仞獣が刃を出し入れできるということは聞いたことがないし、なんだか仞獣とは違う雰囲気もある。しかし、リクラムは本気で倒しに行くことを心に決めた。万が一があってはならない。
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