2-2.シィーラの刃

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「リクラム! 部屋の隅に誘導して!」 「分かった!」  刃を見て危機感を高めたであろうシュリンが声を荒げた。リクラムはそれに応じつつ、すぐさま行動に移す。  猫の進路を潰すようにして打撃を繰り返す。逃げ道をことごとく塞がれる猫は行き先を限定され、部屋の隅に誘導されていく。 (こいつ、本当に無輝か?)  尻尾の刃に星は見受けられない。この猫が仞獣なのだとしたら無輝ということになる。しかし、“黒”であることを差し引いても猫の動きは俊敏すぎた。  一歩一歩着実に部屋の隅に追い詰めていくリクラムだったが、内心は一杯一杯だった。全神経を集中して相手の動きと現在地を把握しながら攻撃をしていく。  隙を狙って振るわれる刃をよけつつも針の穴を通すような精密な作業を繰り返した結果、ようやく猫を追い詰めることに成功した。  猫が部屋の隅に着地した途端、猫を取り囲むように水が現れ、その体を覆う。球体の水膜に閉じ込められた猫はきょろきょろと水のドームを見渡した。  水針の派生、水針包。  水膜が波打ち始める。あとは中に閉じ込めた対象を水針で次々に貫く……はずだった。
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