2-2.シィーラの刃

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 しかし突然人の姿となったフィーナに、リクラムは動揺していた。相手が切りかかってきているのだから応じるべきなのだろうが、どこか躊躇してしまう。 「いったん落ち着いて話を……!」 「何やってるの!! 集中して!!」  なおもフィーナに話しかけるリクラムをシュリンが叱咤する。 「彼女の言うとおりです。死にますよ?」  刀尖が髪を撫でた。宙に舞う自らの黒髪を視界の端に捉えながら、リクラムは肝を冷やした。気を抜けば、目の前の少女が確かな死を呼び込むであろうことを実感する。 「あーもう!」  迷いは消えない。リクラムはそれを振り払うかのように、あるいは忘れようとするかのように反撃に転じる。  鋭い突きを紙一重で空かし、フィーナの懐に飛び込む。  そして飛び込んだ勢いそのままに手刀をか細い首元に振るう。  しかし……。  逡巡があった。そしてフィーナはそれを見逃さない。  気が付くと腹部に鈍痛が走っていた。後ろに吹っ飛ばされ、何度も転がり、ようやく止まる。 「ほんとうに甘ちゃんですね」  前蹴りを放った直後の姿勢そのままにフィーナが言った。相変わらずの無表情だ。 「ごほっ……」  痛みと呼吸困難に顔をしかめ、蹴られた腹を抑えながらリクラムが立ち上がる。 (普通の筋力じゃない……。肉体強化か?)  魔力の見えないリクラムにそれを確かめる術は無い。シュリンに尋ねようかと思ったその時、 「肉体強化なんて使っていませんよ。私にそのような能力はありません」  リクラムの心を読んだかのようにフィーナ自身が答えた。
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