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回避したフィーナの背後に一つの影があった。
シュリンがナイフを取り出した時点ですでに動き出していたリクラムだ。
フィーナが躱したナイフの一つを空中で器用に握り取り、そのままフィーナに切りかかる。
フィーナがリクラムに気付き、体を反転させながら刀でナイフを捌いた。
(余計なことを考えるな。戦いだけに集中しろ)
そう自分に言い聞かせながら、リクラムは一心にナイフを振るう。しかし刀とナイフでは刃渡りが違いすぎる。突きを主体に責め立てるリクラムだったが、所々で返される斬撃に何度も直撃しかけた。
(もっと速く。もっと流動的に。もっと力強く。もっともっと強く……)
ただただ一心に刃を振るうリクラムの体に変化が訪れる。全身を包むようにあった魔力が体内に沁みていき、全身を駆け巡るような奔流を生んだ。
全身を走る熱い熱が、重力を奪ったような身軽さと、溢れ出るような力を作り出す。
リクラムの動きが劇的に変わる。一歩一歩の踏み込みが鋭くなる。手数がみるみる増えていく。そのくせ体に余計な力は入っておらず、流れるような動きを見せる。
フィーナの顔に僅かな驚きの色が浮かんだ気がした。
吸い込む空気が熱い。吐き出す空気に力強い魔力が練り込まれているのを感じる。
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