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しかし響き渡った音は肉を切り裂くものではなく、甲高い金属音だった。
メノウが素手で刀を受け止めている。出血は無い。怪我はしていないようだ。フィーナが力を込める度に刀が小刻みに震えて、メノウの指の中で鍔迫り合いでもしているかのような細かな金属音が響く。
いつもは優しい光を湛えるメノウの瞳が、鋭い視線をフィーナに向け、フィーナはそれを受け止めた。
そこへ新たな声が割り込む。
「とりあえずさ、離れようか?」
気づくと傍らにマナが立っていた。その右手には濁った橙色の球体が浮いており、それを振りかぶるようにフィーナに向けている。
マナが球体を振り下ろすと、フィーナはたまらず刀を手放して後退した。空を切った球体は、今まで傷一つ付かなかった訓練場の床をえぐった。床が溶け、焦げた匂いが漂った。
後退したフィーナが体勢を整えて上体を起こす。
そこへ、
「動かないでね? 女の子相手は心苦しいけど、俺は容赦しないから」
武骨な刃がフィーナの首筋に当てられた。フィーナの背後、反撃も回避も許さない絶妙な位置に立ったアウルが剣呑な雰囲気を放っている。自らの背丈を超えようかという大剣を片手で軽々と水平に構えていた。
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