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しかしそんな中でもフィーナは冷静だった。首筋に刃を当てられているというのに表情一つ崩さない。
「皆さん流石ですね。…………降参です」
フィーナが小さく息を吐いた。と同時にメノウの手にあった黒刀が、幻であったかのように消える。
突然のことに呆然としていたリクラムは、はっとしてメノウの手を取った。
「姉さん! 手は……!」
「え? あぁ、大丈夫よ」
メノウは先ほどまでの厳しい表情を崩し、にこりと笑った。
リクラムがメノウの手のひらを見ると、その表面が艶のない漆黒の膜に覆われていた。その膜がみるみるうちに手のひらの中心に集まっていき、黒い球体と化す。メノウの白い肌が露になった。
「……これは?」
「炭よ。ちょっといじるとかなりの硬度になるの」
メノウが朗らかに答えた。
「そうなんだ……」
リクラムには、炭なんて脆そうな物が刀を受け止めるほどの硬度になるということがいまいち想像できなかったが、とにかくメノウが無事でよかったと思う。ほう、という大きなため息が自然にこぼれた。
「ちょっといじるって……、これかなり難しいですよね」
「うわ!」
いつの間にかシュリンの顔が真横にあって、リクラムは驚いて、思わず仰け反った。
「メノウさん、こんなこと瞬間的にできるんですか?」
シュリンはリクラムの様子に気づかずにメノウに尋ねる。
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