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「一応はね。ほんとはもっと大雑把な魔法の方が得意なんだけど。細かい操作はどうも苦手で」
「なに言ってるんですか! こんなことできるなんて、すごい操作能力ですよ!」
照れたように微笑するメノウの手を、興奮した様子のシュリンが握る。
なんだか場違いな様子のシュリンにリクラムは苦笑した。どうやらシュリンは優れた砕刃師を見ると嬉しくて仕方ないようだ。天才的な能力を持つシュリンは学生の中でも飛びぬけているからなおさらだろう。
しかし今はそんな話をしている場合ではない。まずは黒刀の少女の正体を確かめなければならないのだ。
「えと、シュリン……」
「リンちゃーん。ちょっと空気読もうねー」
リクラムが口を開くと同時に、マナもシュリンに声をかけた。呆れたような、からかうような笑みと共にシュリンを諫める。
「あ。……ごめんなさい」
我に返ったシュリンは頬を赤らめ、顔を伏せた。
「さて、と。メノウ、進めてくれる?」
「うん。わかったわ」
マナに促され、メノウが表情を引き締めた。アウルの前で大人しくしているフィーナに歩み寄る。
「どういうつもりかしら? フィーナちゃん」
「少し主様たちの実力を試したかっただけですよ」
少なからず怒気を含んだメノウの声音にフィーナはあっけらかんと応える。
(フィーナ? ……主様?)
リクラムには話が見えてこなかったが、どうやら少女はフィーナという名前で、メノウとは知り合いであるらしいことは分かった。咄嗟に質問を口にしようと思ったが、なんとかそれを飲み込む。まずはメノウに任せておいた方が良いだろう。
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