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「姉さん、ほんとに大丈夫だからさ。ね、フィーナ?」
「はい。絶対に安全です。……ただ、慣れるまでは体に負担がかかると思うので、そこは我慢してくださいね?」
同意を求めるとフィーナは真顔で答えた。
ここでそれをいうか、と思いつつリクラムは苦笑した。何を笑われたのか分からないフィーナは小首をかしげる。
メノウは更に心配そうに表情を歪めたが、やがて意を決したように口を開いた。
「危なそうだったらすぐ止めるからね。……フィーナちゃん、貴女を信じるわよ?」
「任せてください。そもそも主様の身を守るのも私の役目ですから」
当然のように言うフィーナの言葉を聞き、メノウがしぶしぶとリクラムの手を放す。
なおも不安そうなメノウを優しく一瞥し、リクラムはフィーナに右手を差し出した。フィーナはその手を両手で包み込む。優しく触れられた手は、滑らかで温かな普通の女の子の手だった。
「では、いきます」
フィーナが目を閉じ、小さく息を吐いた。と思うと、フィーナの体に変化が現れた。体の輪郭が黒い靄でぶれていき、ついには拡散する。黒い煙状と化したフィーナはリクラムの手の中に収束していき、その姿を形成する。
リクラムは手の中にずしりとした重さを感じ、気付くと一振りの刀を握っていた。乱れ刃の美しい、黒い刀だ。初めて手にしたにも関わらず、妙に手に吸い付く。先ほどフィーナが振るっていた刀と同じものに見える。
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