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「リクラム!!」
シュリンの声にはっとして顔をあげると、取り乱した様子のシュリンとメノウが視界に入った。二人ではさむようにしてリクラムの体を支えている。
二人の背後ではマナとアウルが心配そうな視線を送っていた。
「だいじょうぶ!?」
落ち着きのない声音と共に、顔を覗き込んでくるシュリンとメノウになんとか笑みを作ろうとしたが上手くいかなかった。乱れる息をなんとか整え、無事を伝える。
「だい……じょうぶ、だよ」
冷や汗をかいた肌が空気に触れ、徐々に体の熱を拡散させていく。そのくせ、体の中ではまだ、あの熱の残滓が渦巻いているのを感じる。段々と整ってきた吐息も魔力混じりだった。
「すみません。少し、やりすぎました」
鈴が鳴るように静かな声がして、頬に温かいものが触れかと思うと、いつのまにか人の姿に戻ったフィーナが目の前にいた。折り畳んだ両脚をそれぞれ外に投げ出し、へたりこむように座り込んだまま、リクラムの頬に手を伸ばしている。よく見ると、フィーナの額にも汗が滲んでいた。
「これがシィーラ族の力です。使いこなすには時間がかかると思いますが頑張りましょう。――改めてよろしくお願いしますね、主様」
相変わらず抑揚のない声音で話すフィーナ。しかしこのとき、フィーナの頬がわずかに緩んだようにも見えた。
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