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無機質な広い空間に刃を交える激音だけがこだましている。
シュリンは訓練室の端に置かれたベンチに腰掛け、リクラムとアウルの戦闘訓練を眺めていた。
アウルが軽々と振り回す巨大な剣を、リクラムは黒刀で受け止めようとするが、そのたびに弾き返されては体を泳がしている。体勢を崩しながらもなんとか粘っているようだが、どう見ても防戦一方だった。
やはり、リクラムの動きはぎこちない。いつもは相手の攻撃をいなすように、あるいは相手の力を利用するように流動するのだが今は違う。明らかに重量差のあるアウルの斬撃を真っ向から受け、力まかせに黒刀を振るっている。
「やはり動きが悪いですね」
シュリンの心中を読んだかのような発言が隣から聞こえた。抑揚のない静かな声だ。
隣を見ると、同じくベンチに腰掛けたフィーナが涼やかな眼差しをリクラムたちに向けていた。
その視線がこちらに向けられる。リクラムと同じ、澄んだ赤い瞳は何度見ても綺麗だと思う。
「そう思いませんか、シュリンさん?」
形の良い唇が、感情の読めない言葉を紡いだ。整った顔立ちに透き通るような肌、そして美しい白銀の髪。どこまでも優美なフィーナだが、ともすると人形のような印象を与える。
「そうだねー。でも仕方ないんじゃないかな? 戦い方、変えてるんでしょ?」
表情を全くと言って良いほど変えないフィーナに対し、最初こそ気まずい思いだったシュリンだが、意外なことに話してみるとすぐに馴染むことができた。
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