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「戦い方、と言うよりは体の使い方ですね。変な癖がついてるみたいですから」
「変な癖?」
「魔力の扱い方です。シィーラ族の力は貴方がたの肉体強化とは違うんです。……魔力で体を包むのではなく、魔力を全身に奔らせるイメージとでも言いましょうか。これができれば主様の動きは格段に良くなるはずです」
シュリンから見て、リクラムの身のこなしは今のままでも十分すぎるほどのものだ。今以上と言われても何だか現実味が感じられなかった。
「なんか凄そうだね……」
「いえ、まだその上がありますよ?」
感嘆を漏らすシュリンに、何でもないことのようにフィーナが言った。
「そのために私がいるんです。私の役目は主様のもう一つの心臓になることです。主様の魔力を受け取り、変化させ、加速させて送り出します」
「……昨日はそれに耐えられなかったってこと?」
シュリンの脳裏に昨日のリクラムの姿が浮かんだ。刀に姿を変えたフィーナを手にし、いきなり過呼吸を始めたときには本当に背筋の凍る思いだった。どうしたよいのか分からず、ただリクラムの肩を掴んで名前を呼び続ける事しかできなかった。
「昨日はすみませんでした。慣れていないのに、いきなり“私”を使わせたのは間違いでした。慣れるまでは他の力を使うことにします」
「まあ、結果的には無事だったから良いんだけどね。……別の力。そういえば刀以外にもなれるんだったね」
昨日、フィーナがそのようなことを言っていたのを思い出す。オリジナルの姿は刀だが、自分は特殊だから他の武器にも姿を変えられるのだとか。
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