3340人が本棚に入れています
本棚に追加
「シィーラ族には、一人に対して一振りの獣が仕えるんです。その獣たち、“シィーラの刃”と呼ばれていたのですが、“刃”は獣と武器の姿をそれぞれ一つずつ持っています。私の場合はこの姿と黒刀ですね。ただ、私のように人の姿を持つ“刃”は、他の“刃”の記憶を持っていて、更に代々シィーラの族長に仕えてきました」
わかりましたか、とでも言うような視線をフィーナが向けてくる。
「なるほどねぇ……」
にわかには信じがたい話であったが、シュリンもその力を目の当たりにしているため、納得するしかない。
一際大きく響いた金属音に、視線をリクラムたちに戻すと、アウルがリクラムの手から黒刀を弾いた所だった。
「あの刀は使っても大丈夫なんだよね」
ものすごい風切音で回転して飛んでいき、訓練室の壁に突き刺さった黒刀を眺めながらフィーナに尋ねる。
「あれは形を模造しただけですから普通の刀と変わりませんよ」
リクラムが今使っている黒刀はフィーナが形成したものだ。もはや何でもありだな、と半ば呆れてしまう。
得物を無くしたリクラムは素手でアウルに挑んでいるが、勝負がつくのは時間の問題だろう。
フィーナを使うのであれば、いなすような戦い方にこだわらず、存分に力を振るう必要がある。その訓練をしているらしいのだが、どうなのだろうとシュリンは思ってしまう。愚直なまでにアウルに突進していくリクラムは、明らかに様になっていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!