2-3.新たな力

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 必死にアウルに食らいつくリクラムの姿は、痛々しい程のものだった。シュリンはその姿に、牙をむき出しにして唸る獣を連想してしまって、何故かどきりとした。 「……無理して戦い方を変えなくても良いんじゃないかな?」  小さく呟くと、フィーナがこちらを向いたのを感じた。敢えてフィーナの方は向かずに話し続ける。 「今のままでもフィーナの力を活用することはできるし、あれじゃ危険が増えるよ? どうしても威力が必要なら私の魔法もあるし……」  なによりあの戦闘スタイルを確立するまでのリクラムの努力を思うと居たたまれなかった。もちろんシュリンはリクラムがどのようにして今の力を手にしたのか知らない。それでも想像することはできる。魔法の使えない苦悩を必死に追いやり、周りの視線に耐えながらも訓練に励んできたのは間違いなかった。  シュリンにとってはリクラムを想っての発言だったのだが、フィーナは思いもかけないことを口にした。 「……正直なところ私がいれば、主様はある程度一人でも戦えます」 「え?」  思わずフィーナを見ると、再び視線がかち合った。赤い瞳にそぐわぬ冷静な目だ。  貴方は必要ありません。そう言われた気がして反論しようとしたシュリンだったが、フィーナの視線に射抜かれて、出かけた言葉を呑み込んだ。澄みきった瞳に悪意を感じなかったからだ。  それに、 「……“ある程度”っていうのは?」  その言葉が引っ掛かった。
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