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「たけちゃん、怒ってる?」
ストレートに訊いてみれば、
「うん、怒ってる」
ストレートに答えが返された。
「俺がしゃしゃり出たから?」
ピタリと、尊の足が止まる。
繋いだ手にぎゅっと力を込めた尊は、
「怒ってるのは、自分自身に、だよ」
手の力と反対に、全く力の無い声でポツリと呟いた。
「最後迄やりきれなかった不甲斐なさに、結局いっちゃんにやらせてしまった情けなさに、腹がたった」
「たけちゃん、格好良かったよ?」
それだけ言って、今度は俺が尊を引っ張って歩き出す。
なーんにも喋らないで、手だけ繋いだまま歩き続けた。
時々運動部の掛け声が聞こえてくる以外は、何の音もしない。
しんとした校舎は、ちょっと怖い。
陽も落ちてきて、うっすらと暗いのも、余計に怖く感じる。
「たけちゃん、疲れたでしょ?」
訊けば、尊は頷く。
「うん、疲れた……」
「俺、たけちゃんを見直した。 見直したって言うか、たけちゃんってやっぱりたか兄やたく兄と兄弟なんだなって、感心した」
尊は少し照れた様な顔で、下を向く。
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