1077人が本棚に入れています
本棚に追加
/3000ページ
「俺も、いっちゃんが大切だよ?」
「うん、ありがとう」
大切に思ってもらえるって、嬉しい。
俺、本当に、尊と出逢えて幸せだ。
「たか兄が待ってるから、急ごう」
そう言って尊は、俺の手を引いた。
なんだか、ほかほかする。
繋いだ手も、あったかい。
尊も同じ気持ちだったみたいで、機嫌良さそうに鼻歌を歌い出した。
とんとんとリズミカルに階段を下りながら、俺達は端から見たら気持ち悪い位の笑顔を浮かべていた。
その笑顔が、固まった……
ない!?
下駄箱の上に置いた筈のケースが……消えた!?
「あれ、あー、無い……ねぇ~」
間の抜けた尊の呟きを耳にしながら、俺はただ茫然と突っ立っているしかなかった。
そんな俺の目の前に、ひらりと何かが差し出された。
「千円……?」
尊の呟き通り、横から差し出されたのは、数枚の千円札だった。
横を見て、更にフリーズした。
そこに居たのは……南だった。
「ほら、和泉の取り分だ」
千円札をヒラヒラさせながら、南は言う。
って――
「名前呼び!?」
和泉と呼ばれた事に、真っ先に突っ込んでしまった!!
最初のコメントを投稿しよう!