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「いっちゃんは、ルノの一番のお気に入りよ」
香織姉の言葉に、俺は嬉しくて嬉しくて、頬が緩んだ。
「きしょ!」
「なんですってー!? 本当に!?」
失礼な都織の声は、居間から聞こえてきた尊のお父さんの怒声にかき消された。
と同時に、居間から飛び出して来るおじさん。
俺を目に止め、がしりと肩を掴んだ。
「和泉!! 和也の両親――お祖父さん・お祖母さんと会ってないって、本当か!?」
えらい剣幕で訊いてくるおじさんに、ちょっとびびる。
でも――
「えっとー、おじさん、お父さんは天涯孤独だって母さんが言ってたよ? 母さんも両親居ないって――だから家は、親戚はいないって……」
答えながら、まさか、と思った。
まさか……
「それも嘘!?」
「あンの雌狐め!! どこまで和泉を弄びやがる気だ!?」
怒髪天に衝くおじさん、般若みたいな顔になってる……
「おじさん……怖い……」
呟く俺を、おじさんは腰を屈めて見据える。
「いいか、和泉。 よーく聞くんだぞ」
真面目な顔したおじさん、珍しい。
俺は頷いて、おじさんの言葉を待つ。
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