五匹目 レッサーパンダは 斗う!?

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その手を遮る様に、おじさんが俺の前に立つ。 おじさんからまた、赤い炎が勢いよく噴出しているのが感じられる。 「ちょっとォ、何よー! 暫く和泉を預けるからって、勘違いしないでよね!? 和泉は私の子なんだから!!」 母さんの言葉に、はっきりとした否定の声が居間から返された。 「いいえ、今日からいっちゃんは、貴女の子ではありません!!」 声と同時に、どす黒いオーラ(?)が居間から溢れ出して来て、パニック映画の恐怖の怪人やら怪物やらが現れる時に流されるBGMみたいな音楽も聞こえそうな感じで、ゆっくり、ゆっくりと伊織のお母さん・雪江さんが姿を現した。 香織姉によく似た体型の小柄なおばさんは、ピンクのフリフリエプロンをがばりと脱ぎ捨てて、くりんくりんの茶髪を逆立て、いつも優しい光りを湛えていたくりっとした大きな二重の瞳に怪しい輝きを走らせ、真っ直ぐ母さんを見詰めた。 おばさん以外、誰も動かない――いや、動けない!! あの母さんでさえ、ゴクリと生唾を飲み、顔をひきつらせておばさんを見返すのみだ。 「綾乃(アヤノ)……」 おばさんは低い声で、母さんの名前を呼ぶ。
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