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「拉致」
ぼそりと呟いて、俺を肩に担いだまま伊織は歩き出した。
「都織、掃除機の片付けは頼んだぞぉー!」
伊織に担がれたまま叫ぶ俺に、掃除機を受け取りながら都織は頷く。
「チョコチップ・クッキーで、引き受けた!」
あれ?
俺、誰の部屋、掃除したんだっけ……?
「都織ぅ~、掃除させときながら、クッキーまでねだるの~?」
とっとこ付いて来ながら、尊が言う。
「だって和泉も尊も、高校入学してからちっとも来なかったじゃないか!」
ああ、淋しかったのか……?
が、俺の考えは、甘かった!!
「おちょくる相手が居なくて、暇だったんだよ!」
くーっ!!
勉強しろ、受験生!!
「都織、コーヒー3つ」
伊織の注文に、俺は慌て言い繋ぐ。
「お煎餅も付けてくれたら、クッキー作るよぉー」
「おー! 約束だぞ!?」
言うが早いか、都織は走り去った。
「いっちゃん、コーヒーにお煎餅って、バッド・チョイスだよ~」
「何を言う、たけちゃん!! コーヒーの渋味とお煎餅のしょっぱさは、意外と合うんだぞ」
伊織に担がれたまま俺が言うと、伊織が少し笑った。
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