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「たか兄とたく兄が、居間の片隅で灰になってた」
都織はベッドに座り、コーヒーを飲みながら言う。
「居間は現在、ブリザードが吹き荒れております」
ブリザード?
「伊織のお母さんは何だか知らないけど真っ黒な霧みたいな感じで、家の父さんは真っ赤な炎って感じだったけど……」
尊が、不思議そうに呟く。
「家の親父が帰って来たんだ」
そうか、伊織のお父さんはブリザードなのか。
何でもない事の様に都織は言ったが、伊織のお父さんまで加わったとなると――
「いっちゃんのお母さん、まな板の上の鯉、だね?」
言い得て妙、だぞ、尊?
「まあ、仕方ないな? どう考えても、おばさんが一方的に悪い」
呟いて、伊織はコーヒーを口にする。
「けどさ、和泉」
ぽいっとチョコを口に放り込み、都織は言う。
「見事なまでに、騙されてたなあ」
「仕方ないよ、いっちゃんはおばさんに騙される事なんて、ちっとも頭になかったんだから」
「和泉は少し、他人を疑う事を学んだ方いいな?」
「でもね」
俺はお煎餅をじっと見詰めながら、ぽつりと思いを口にする。
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