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「いっちゃん」
おばさんは自分の前に座るよう、俺に指示した。
指示通りに腰を下ろすと、斜め前の母さんがちらりと俺を見て、直ぐに目を伏せた。
酷くばつが悪い――そんな感じだ。
コホン、と咳払いして、おばさんは俺を見詰める。
「先に言っておくけどね、いっちゃん」
俺は黙って、おばさんの言葉を待つ。
「綾乃は決して、いっちゃんを疎んだり嫌ったりしていない、と言う事をわかってちょうだいね?」
ん゙ー、そう、ですか……ね?
素直に頷かない俺を見て、おばさんは苦笑を浮かべた。
「私の言葉でも、信じられない?」
「……」
今日わかった事を考えると、大好きなおばさんの言葉でも、ちょっと信じられないよね、やっぱり。
母さんは俺が馬鹿だから嫌いで、邪魔くさく思っているとしか思えないし――
何も答えない俺を、おばさんは困惑しきった顔で見詰めていたが、一つ短い溜め息を付いて母さんに目を向けた。
「綾乃、これが貴女の行いの結果よ? いっちゃんは、もう貴女を信じてくれないわ」
ハッとして顔を上げた母さんが、泣きそうな表情を浮かべて俺を見たが、俺は目を反らすしか出来なかった。
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