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「伊織には、無理をさせ過ぎた」
後悔している、とたか兄は言う。
精神的にも肉体的にも無理に成長しようとした伊織は、たか兄の方が苦しくなる程酷く痛々しかったそうだ。
「そこまでしてでもお前達を守りたかったんだろうが、ああ言うのは二度と見たくない」
「伊織、気にするなって言ってた……自分が勝手にやってる事だから、気にするなって」
「和泉はタケを双子みたいだと言うが、本当に双子みたいだったのは伊織なんだぞ」
そう言ってたか兄は立ち上がり、ご馳走様、とダイニングを出て行った。
伊織と双子――
確かに、生まれた時から隣に伊織が居た。
和美は姉ちゃんズと一緒にされて、1ヶ月違いの俺と伊織はいつも一緒だった。
俺は本当に小さくて、体が小さいせいか何をするにもトロくて――反対に伊織は総てを完璧にこなし、身体だって平均以上で、いつも俺の前を歩いていた。
尊と出会うまでは、伊織の背中を必死に追いかけていた気がする。
苦労せず伊織の後を付いていける都織と違い、必死になってもかなり遅れる俺は、足手纏いだった筈だ。
でも伊織は、いつも立ち止まって俺を待ってくれていた。
いつも……
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