1077人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもいつも、伊織は待ってくれていた。
手を差し伸べるでもなく、ただ立ち止まって居るだけだけど、確かにそこで伊織は待っていた。
ぶっきらぼうに、黙って、立ち止まっていた。
なのに俺は、俺と同じ速さで行動する尊を見つけて、伊織の背中を追いかけるのを止めてしまった。
楽な道を選んだ俺を、勝手に離れて行った俺を、それでも伊織は見捨てなかった。
見捨てるどころか、尊まで抱えてくれた。
「やっぱり、伊織には敵わないや」
伊織って、苦労性なんだなぁ。
苦労させてる俺が言う台詞じゃないけど、伊織は意外と貧乏くじ引くタイプかも。
「そうか、伊織はお父さんじゃなくて、お兄ちゃんだったのか」
苦労性のお兄ちゃん。
感謝しないと。
俺、やっぱり恵まれてる。
良い人達に囲まれて、心配してくれる人達が沢山いて、なんて俺は幸せ者なんだろう。
しかも、尊と言う親友までいる。
母さんにも愛されちゃてたみたいだし、うん、俺って本当に幸せ者だ。
俺は、俺を助けてくれる人達に、何を返せるのだろう?
どう、お礼をすれば良いのだろう?
わからない……
最初のコメントを投稿しよう!