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『いや、でもね?』
ぶ~らぶら、ゆ~らゆら。
伊織父の手の下で、父さんは体を左右に揺すりながら説明する。
『和泉の謎を語るには、そこから始めないと出来ないんだよ』
俺の謎、か。
ちらりと和美の様子を窺えば、
「なによ!?」
バチリと目が合った。
「和美が嫌な思いするなら、俺、父さんを黙らせるよ?」
「……」
「俺、和美に嫌な思いさせてまで、自分の謎とか知りたいと思わないし」
「でも、知りたいんでしょ?」
「う~ん…… 正直、どうでも良いかな?」
と答えたら、
「はぁ!?」
と言う声が、沢山返ってきた。
「だって、それを知ったからって、俺が変わる訳じゃないし」
ってか、今更だとも思うよ?
16年も人間やってきちゃったら、過去を知った所で、この先の人生に何の影響があるの?
とか、考えちゃうもんだし。
所詮、過去は過去。
済んだ事、終わった事。
大切なのは、今だと思うよ?
「お前は、今を乗り切るだけで手一杯なだけだろ? 5分先の未来を考えるのも面倒臭い、物臭なだけだろうが」
いやいや、そんな事はないよ、伊織さん?
俺だって、未来を見据えているよ?
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