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「こうちゃん……来週から俺がお昼用意するから、変わった弁当は持参しなくていいよ?」
溜め息混じりにそう言うと、上杉はびっくり顔になる。
「あー、男が作る弁当なんか、嫌かな?」
心配して訊いてみれば、上杉は激しく首を左右に降った。
「欲しい」
「了解。 今日の分も、なんとか用意するからね」
こっくりと上杉が頷いた時、
「あの……」
トマトまみれのクッキーが呼び掛けてきた。
「俺は……無視?」
憐れなトマト男に同情する者は、ただの1人も居なかった。
皆各々、作業に戻る。
班は決まったようだ。
班内の役割分担を、決め始めていた。
「無視!? 無視かー!?」
「煩い!」
独り騒ぐクッキーに、女史が雑巾を投げ付ける。
あまりの扱いにガックリ肩を落としたクッキーは、雑巾片手にすごすごと教室を出ていった。
チョンチョンと、肩を指で突っつかれた。
佐伯が、物欲しげに俺を見ている。
あっ、ここで宣言しちゃえば、こそこそ弁当を用意する必要なくなるや。
「大丈夫、ちゃんととーくんのも用意するから」
堂々とね、と付け加えれば佐伯は笑顔になった。
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