八匹目 レッサーパンダは 謳う!?

3/75
前へ
/3000ページ
次へ
「どういう事よ!? ううん、どういうつもりなの!?」 食い付かんばかりに問い詰めてくる、和美。 「あ、う……」 言葉に詰まる、俺。 「答えなさい!!」 和美は、焦れったそうに畳み掛けてくる。 「う……」 言葉にならない、俺。 「和泉!!」 皆が、一体何が起きているのかと、俺と和美を注視している。 「和泉!!」 もう一度和美が俺の名を口にした時、 「あらあら、兄妹喧嘩かしら?」 ちょっと場違いな、のんびりした小田切先生の声がした。 ばつが悪そうな顔をして、和美は俺から手を離した。 「和美」 頃合いを見計らった様に、伊織が和美に言う。 「香織姉から、聞かされているんだろ?」 「納得いかないわよ……」 返す和美の声は、力無く弱々しい。 「それでも、だ」 伊織が、諭す様に言う。 「親達が決定した事だ、覆る事は無い」 解るな? そう付け加える伊織を、和美は不服そうに見返したが、反論する事はなかった。 和美にとって伊織は、実の兄たる俺よりも 『兄』 なんだ。 しかも、自慢のお兄ちゃん。 伊織は正しい、伊織は間違わない、何でも出来る誇らしいお兄ちゃん。
/3000ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1079人が本棚に入れています
本棚に追加