八匹目 レッサーパンダは 謳う!?

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「ごめんね」 としか言えない。 和美が、苦い顔をした。 無言で、じっと俺を見下ろしている。 「ごめんね」 もう一度謝ると、和美は小さな溜め息を溢した。 「わかったわ、綾とわたしにも非はあるし……」 和美は、ポンッと俺の頭に手を載せた。 和美は母さんを 『綾』 と呼ぶ。 母さんは俺には 『母さん』 と呼ばせるくせに、和美には絶対に名前で呼ばす。 和美と姉妹に見られたいと言う事らしいが、まあ無理が無いから良いんだろう。 頭の上の手が、おでこに移動した。 「でもね、雪ママに内緒で――」 おでこを優しく撫でられた。 「たまには、ご馳走してー!」 俺を抱き締めてくる、和美。 ……和美の怒りは、食欲によって掻き消されたようだ。 …… ……こんなんで、良いのか? 「綾ったら、真っ黒なトースト出すわ、どろどろのコーヒー出すわ……殺意を感じるのよォ」 「和美……自分で作る、と言うのは無いのか?」 呆れた様に、伊織が言う。 「無理!!」 即答して、和美はぎゅうぅっと強く俺を抱き締める。 「和泉ぃ~」 こりゃ、相当空腹だな?
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