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入り口でうだうだやってたら、後ろから声を掛けられた。
中谷が物凄く機嫌の良さそうな顔で、呼び掛けて来ていた。
「お弁当、美味しかったよ」
と言った中谷が、硬直する。
徐々に青ざめて行く中谷の視線は、真っ直ぐ上杉に向けられていた。
今にも走り逃げそうな中谷の首根っこを、ひょっこり姿を表した鹿野が掴まえる。
「気にすんな」
中谷を引き摺って実習棟の中に足を踏入れながら、鹿野は面倒臭そうに言う。
「何でか知らないが、今朝から上杉が2人に張り付いてるって話だ」
行くぞ、と鹿野は俺達を促す。
「こうちゃん、中谷に何かしたの?」
先行く2人の背中を横目に見ながら、ヒソッと尊が上杉に問い掛ける。
「いや、たぶん不良だからだろ」
何の表情も浮かべずに、上杉は短く答えた。
それが逆に、酷く切なく見えた。
ガタイのせいで怖がられる、って佐伯も言ってた。
上杉は更に 『不良』 ってレッテルも貼られて、周りから畏れられているんだろう。
ちょっと生活能力は無いけど、似顔絵が上手なただの高校生なのにね?
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