八匹目 レッサーパンダは 謳う!?

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「離れろ」 もう一度俺の頭を叩いて、伊織は溜め息混じりに命令してきた。 「怒ってない?」 伊織を見上げて訊いてみれば、伊織は苦笑いを浮かべて頷いた。 「本当?」 「しつこいと、本当に怒るぞ?」 ぱっと離れた俺に、伊織は何かを投げ付けてきた。 ぱしりと受け止めた俺の手の中の物は、 「キャッシュカード?」 銀行のキャッシュカードだった。 しかも、俺名義の。 「おばさんから朝預かったんだよ、お前に渡してくれってな」 「?」 なんで、俺名義のキャッシュカードなんてあるの? 俺、銀行口座なんてないよ? 伊織のお母さん、作ったのかな? 「おばさんが持ってたそうだ」 伊織は母さんから聞いた話しを、淡々と語ってくれた。 この口座は父さんがまだ生きていた頃に、和美のと一緒に父さんが作ったものだそうだ。 父さんが亡くなった後も、母さんがちゃんと管理してくれていたらしい。 ちょこちょこ入金してくれていたそうで、それなりにお金が入っているとの事。 「取り敢えず、必要な時に下ろして使え、と」 母さん……ありがとう。 本当に俺の事、ちゃんと考えてくれていたんだね?
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