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あっ、でも俺、キャッシュカードって……
「使い方知らない」
キャッシュカードを見詰めてぼそりと呟けば、
「俺も!」
元気に上杉が同調した。
伊織が呆れ返った溜め息を溢し、俺をちょいちょいと指先で呼ぶ。
「なに?」
歩み寄る俺に、屈んで伊織はヒソッと耳打ちした。
「それが暗証番号だ、忘れるなよ?」
俺は、お利口さんに頷く。
「使い方は、尊に教えてもらえ。 そこの巨大ボケ猛獣も、だ」
「そう言えばいっちゃんはいつも、おばさんから食費と一緒に現金でお小遣い貰ってたものねぇ~」
うん、キャッシュコーナーに立ち寄る機会さえなかったよ?
「俺も、落とすからって李杜がやってくれるから、カードなんて使った事ないぞ」
上杉……どうして偉そうに、胸張って言い切るの?
「尊、大小ボケ2人にちゃんと教えてやれよ?」
「わかった」
答えた尊の頭を撫でた伊織は、俺と上杉の頭をポンポンと叩いてから、くるりと背を向けた。
頭を叩かれて、上杉はちょっと笑った。
「通帳はおばさんが持っているから、足りなくなったら入金するそうだ」
立ち去りながら、伊織は言った。
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