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「和泉……?」
和美が伸ばして来た手を、俺はぱしっと叩き払った。
こんな事、した事ない……
例え指一本だって、和美を叩くなんて、した事なかった……
でも、今は、そうしたかった……
凄く……頭にきてた……。
「和泉……?」
払われた手をそのままに、和美は恐る恐る俺の名を呼ぶ。
「……遅刻、するよ?」
俺は和美から目を反らし、お腹の中でぐるぐるしてる感情をなんとか抑えながら、そう言った。
ちらりと見やった壁の時計は、7時50分を指していた。
「和泉も遅刻でしょ?」
ハッとして、和美は言い返した。
「俺は良いの」
「良いって……休む気?」
「休まない」
要領を得ない俺の言葉に、和美はイラついた様だ。
「ほら、行くわよ!?」
そう言って和美は、鞄と弁当を抱え、パンをくわえて立ち上がった。
「俺は良いの」
「あー、もう、なら勝手にしなさい!!」
怒鳴った和美は、俺にビッと指先を向けて、
「兎に角、尊の家に行くなんて、許さないから!! 帰って来たら、じっくり話すわよ!!」
そう言い捨てて、出掛けて行った。
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