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ぼんやりしているうちに、時間がきたらしい。
ピンポンピンポンと、せっかちな呼鈴を押す音がする。
こんな押し方をするのは、絶対たか兄だ。
案の定、開けたドアの向こうにたか兄の長身があった。
今日は非番だから送り迎えしてやる、っとたか兄が言ってくれた。
だから俺には、登校時間に余裕があったんだ。
「上手くいったか?」
問い掛けたたか兄は、俺を見下ろして怪訝な顔をした。
「和泉……泣いてたのか?」
ぷるっと頭を振る俺に、たか兄はそれ以上涙の件には触れないでいてくれた。
「取り敢えず、行くか? 荷物は?」
「ん、あれ」
指し示した先の荷物を見たたか兄は――目を丸くした。
「サンドイッチ……だよな……?」
たか兄が驚くのも、無理ない。
そこにあるのは、20人前を軽く越す大量のサンドイッチが入ったケースの山だから。
「ちょっと思う所あって、それだけ必要なの。 あっ、たか兄、たく兄とおじさんの分も持って帰ってね?」
「タクの分も?」
「うん、今日休みって言ってたから、用意した」
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