悲しい国

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
ティッシュで血を拭い、消毒液を探した。 消毒液の薬品くさいのと血の鉄の匂い・・・ その二つの匂いが鼻につんとくる。 『僕は一体何を・・・』 机の上にあったのは剃刀。 『そうか、この剃刀で手を・・・』 でも、僕は何でこんな事を? ズキッと痛む手首に消毒液のついたティッシュをあて、 止血する。 痛い・・・痛い・・・・・・ 僕は人から不要とされ、自分の命を捨てようとした。 でも、それはスグに捨てられるものではなかった。 ---学校では一人寂しく、家へ帰っても誰も家にいない--- ---親にも見離され、僕一人。--- 僕は一体どうすれば・・・。 僕は考えた。 僕がこんな事をしているのは世の中のせいだ。 人を殺し、苦しませ、周りの人は助けようともしない。 こんな世界が僕を殺そうとしたんだ。 僕は怒った。 こんな世の中が、こんな世界を作る人間が この世を支配しているからだ。 この世の人々が安心して暮らせるように 誰も自ら命を捨てないように 僕がこの世をかえてやる!この手首の傷に誓って!! そう硬い決心を背に少年は家を出た。 少年は人々に呼びかけた。 人々を説得させるのには凄く時間がかかったが、 やがて、安心できる町が一つ出来上がった。 優しさの溢れる小さな町。 このままこのような町を増やし、幸せ溢れる世の中にしようと もう一度手首の傷に誓った。 だが、それもつかの間だった。 この国を支配している奴が少年を許さなかったのだ。 少年は王に言った。 この世は腐っている。 誰かが必ず変えなければ いい人間が誰一人といなくなってしまう。 王よ、どうか目を覚まして欲しい。 人を傷つけないでくれ。 人を殺さないでくれ。 腐った人間にならないでくれ。 僕みたいな不幸な人を増やさないでくれ。 次の日、少年は殺された。 幸せや、自由を手に入れるのには命を捨てる覚悟も必要だった。 しかし国は何も変わらなかった 人の命なんて国からすればどうでもいい話 自分さえよければと勝手な人間の国 この話はここで終わり ある国の小さな町の悲しい物語。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!