一章 陽良

7/27

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
  空も、木も地面も。 すべてが真っ赤だった。 見渡す限りの赤にぼくも夕闇も言葉を失った。 我に返ったぼくは夢中で火の海の中を走った。 後ろで夕闇が何か叫んでいたが聞こえなかった。 聞けなかった。 お父さん、お母さんが心配で。 必死に走った。 やけどした。転んだ。すりむいた。 体の痛みなど気にもせず、ぼくは走った。  
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加