一…。

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記憶を必死に思い起こす。 ………貴方は誰? 優しい声。 それでも貴方は私の前から消えてしまった。 私は幼かった。 皆は責めてもしかたない。 君は幼かったんだからという。 でも、違う。 貴方は何が気に入らなかった? 私が泣いたから? 私が甘えたから? 私が抱っこをせがんだから? 私が何も出来ないから? 私が上手く喋れないから? 私が、悪いんですか? だったらもう十を越えました。 一人で立てます。 上手く喋れます。 泣きません。 我儘なんて言いません。 甘えたりしません。 抱っこをせがんだりしません。 手伝いをします。 だから、記憶や夢の中じゃなくて私の前に現れてください。 貴方は何処かにいるのでしょう? たった一目だけでも良い。 貴方と喋れなくても………。 私を置いて行って何処かへと行ってしまった。 貴方が生きていけるのなら。 貴方の声が聞きたい。 貴方の笑顔が見たい。 貴方の温もりを感じたい。 例え愛が他の人へと向いてても 例え他に大切な人がいても 例え他に子供がいるとしても 貴方に会えて話せるとしたら言いましょう。 「生んでくれてありがとう。 もし、子供がいるならば私の様に捨てて何処かへと行かないであげてね。私の様に、悲しみや憎しみを知ってほしくないからね。 でも、恨んでないよ。 本当に生んでくれてありがとう。 でも、もっといたかったな。 一緒に。こんなに大きくなったんだよ。 お母さん。」
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