一…。

9/10
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
小さな手をいっぱいに、広げる。 愛らしい笑顔を私にむける。 そして、少し生えてきた歯を見せてニッコリと笑う。 人差し指を差し出すと、ゆっくりと握りしめ ふぅっと息を吹き掛けると、キャッキャッと笑う。 まだ何も知らない君に、私は何を教えよう。 まだ何もわからない君に、私は何を言ってあげよう。 まだ何も言えない君に、一体どれだけの言葉をかけてあげよう。 君はまだまだ青い。 だから苦しい事も、辛いこともまだまだ知らない。 立ち止まり、しゃがみこんでしまう事も 嘆き悲しみに暮れる事も 夢が消え、絶望の淵に立たさせる時がくる事も ………何も知らない。 もし君がもう少し大人になって、立ち止まりしゃがみこんでしまう事があるならば、私はゆっくりまっておこう。 君が自分で立ち上がるまで。 嘆き悲しみに暮れる時がきたならば、私は君に経験した事を話そう。 夢が消え、絶望の淵に立たさせる時がきたならば私は君に夢というものを一緒に探してあげよう。 君はまだまだ何も知らない。 だから今は小さな手をいっぱいに広げ、愛らしい笑顔を私達にむけ、まだ生えたばかりの歯を見せてね。 そして周りの人にいっぱい甘えときなさい。 私は君を見守り続けよう。 いつか君は…。 一人で立ち上がり 一人で髪を結ぶようになり 補助輪を外して自転車に乗り 恋を覚え 出逢いと別れを覚え 人生の成功と失敗がある事を知る。 色んな事を見て、学びなさい。 そんな君を私は見守り続けよう。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!