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明くる日、
二人(?)はご主人の友達の家へと歩いていた。
『………で。どうして私はカバンの中にいるのかしら?』
私はご主人の小さなエナメルカバンの中から顔だけを出し、目線だけご主人に向け尋ねた。
周りから見れば可愛らしいのか人とすれ違う度黄色い声が聞こえた。(私の声は聞こえていない)
「念の為や」
『それ、答えになってるのかしら‥』
ご主人によると、
今日遊ぶ友達は二人らしい。
一人はご主人と同じく大学一年で一人は浪人生らしい。
二人とも高校からの仲らしい。
今更思ったが、
親友とケンカ中の私がご主人の友達の家に行くのは少しおかしい気がする。
まぁ自分から行くと言ってしまったからどうしようもないが。
『近くに住んでるのね』
「まぁな。実家から近めの大学に入ったし、元から家近かったしな。俺は親に無理言って一人暮らしさせてもらっとるけど、あいつは実家から大学行っとるで」
『親、ね‥‥‥』
私は親の顔を知らない。
私と同じ黒色なのかどうかも覚えていない。
だから、
親の温かみを知らない。
あの時温かく感じたのはそのせいなのかもしれない。
ご主人は私の持っていないものを沢山持っている。
少し羨ましく思った。
「後5分ぐらいで着くわ。もうちょい我慢せぇよ」
『分かったわ』
相も変わらずご主人は歩いている。
その顔はどこか楽しそうに見えた。
しかし、
どうして私を連れて行きたかったのだろうか。
友人の一人が大の猫好きなのだろうか。
もし二人ともだった時は顔でも引っ掻いて逃げることにしよう。
『どうして私を連れて行きたかったわけ?』
私は単刀直入に尋ねた。
「ん?あぁ、今日来る一人に大の猫好きがおってな、今お前飼っとるって言ったら是非見たいって言うもんでな」
『あぁそぅ』
あまりにも予想通りすぎたため面白みが無くなってしまった。
その後私達はしゃべること無くご主人の友達の家へと向かった。
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