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「可愛ぃよぉ~~」
(いい加減顔すりすり止めなさいよ!)
あれから30分私はずっと彼女に弄ばれていた。
(ごっ、ご主人!!助けて!!!)
目線だけで訴えるがご主人は男の人と話をしていて見向きもしなかった。
(絶対に後で引っ掻く!!)
口調が少し変わっていることにも気付かず、私は弄ばれ続けた。
彼女を引っ掻くという選択肢はなかった。
「しっかし、あいつも相変わらずやな」
「そうだな」
「驚いたわ。言うてた時間の30分前にここに着いたのに、あいつおるんやもん」
「あぁ。彼女どうしても待ちきれなかったらしい。オレが朝起きて今日の準備をしようとしたらピンポンって鳴ってね」
「朝って何時や?」
「8時くらいだったかな?」
「待ち遠し過ぎるやろ!!」
「まぁいいんじゃない?」
「いいんか‥‥」
「それにしても、
何だか君の猫死にかけてない?」
「あん?」
ようやくご主人がこちらを向いた時、私は手足をぐったりさせて彼女の頬ずりを受けていた。
「確かに、そやな」
「助けてあげたら?」
「いやいやいや、
あいつ確実に怒るやん。あいつ怒ったらおっかないからなぁ…」
「でもなんか物凄くこっち見てるよ」
「せやな…」
助けなかったら殺るわよ、といわんばかりの目線を私は二人に向けていた。
「しゃーないな」
ご主人はそう言うと彼女の方にむき直した。
「おい。いい加減にせんとそいつお前のこと嫌うぞ」
ご主人が言った瞬間だった。
「はっ!」
彼女は一瞬で私を離し、しかし物欲しそうに手を見つめしょげていた。
まるで叱られている子どもだ。
私は力無く寝転んだ。
「よっぽど疲れたらしいな。しばらくはそっとしといたれ」
「うぅ‥‥」
彼女は残念そうにしながら私を見て二人の元へ歩いていった。
「猫が好きなんは俺らもよう知っとるが、ほどほどにしときよ」
「相手も生き物だしね」
「うん‥‥‥」
彼女は俯きながら答えるとご主人の隣に座った。
「ところでお前ら朝から一緒やったんやろ?
何しとってん。まさか‥‥?」
ご主人がイジワルな顔をすると彼女は顔を赤らめた。
「そんないやらしいことなんてしてないよ!!」
「ん?俺はまさかとしか言うとらんぞ?」
「うぅ‥。イジワル!!」
「はっはっは」
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