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私は猫だ。正確いうならば黒猫だ。
私はよく知らないが、黒猫のことをどこかでは幸運を呼ぶ者、またどこかでは不幸を呼ぶ者といわれているらしい。
私は野良猫だった。好きでなった訳ではない。
気がついたらなっていた。
魚屋から魚を盗んだりして何とか生きていた。
しかし、
そんな私には少しおかしな能力があった。
人の言葉を理解し、人の言葉を話すことが出来るのである。
まぁ話せることに気付いたのはご主人に会った後だったのだが。
もしわかっていたならば、わざわざ盗まなくとも『わけてくれ』と言っていれば魚をもらえたかもしれない。
‥‥‥それはないか。
この能力は犬のように言葉の意味も解らず、ただ人の声に反応することではない。
その言葉の本来の意味を理解することが出来るのだ。
だから、
私は犬に『ちんちん』をさせる飼い主の気が知れない。
それは男の下半身についているアレのことだろうに。
雌なのにさせられている犬を見ると非常に可哀相に思える。
ある雨の日
私は雨宿りの為軽自動車なるものの下でくつろいでいた。
この季節の雨の日は道路が冷たくて気持ちがいい。
ただ続くとそれはそれで憂鬱な気分になる。
虫で体がかゆくなるからだ。
と、突然私に何かが当たった。
それは当たるとぐるぐると高い音を出しながらその場で回り止まった。
人が使っている小銭なるものらしい。
私は気にせず瞼を閉じようとしたのだが---、
『!!』
これまた突然人の顔が目の前現れ私は驚き身をかたくした。
「っと。そんなとこにあったんかいな。おいそこの猫。そこ小銭、こっちに転がしてくれへんか?」
こいつはアホなのか。
私は呆れながら、しかし体勢は変えず目を細めた。
「‥‥‥まぁ猫にそんなこと出来る訳あらへんよな」
当たり前だ。
人の言葉を理解出来る私ならともかく、普通の猫にそんなこと出来るはずがない。
「しゃーないな」
そういうと人は手をのばしてきた。
私は警戒はしていたが小銭に手をのばしているのだろうと思い、少し後ろに下がるだけで留まった。
しかし、
よく見ると両手で取ろうとしている。
それが何を意味するのか理解した時には私は人の手の中に納まっていた。
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