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二人を何とか誤魔化すことには成功した。
が、ご主人はまだ私を睨んでいた。
「ところでさ、今日勉強はいいの?」
「朝早くからきてる君が言うかい?」
「あぅ‥‥」
「…で、何でお前は自分の猫を睨んでるんだ?」
ご主人は男に尋ねられ睨むのを止めた。
「いや‥何でもない」
「そうか」
「そういえばお腹減ったね」
ふと、彼女以外が時計を見た。
短針が12を少しまわっていた。
「そうだな。じゃあ温めてくるよ」
「よろしくーーー♪」
そうご主人に言われると男は部屋から出て行った。
それを見るとご主人は女の人の方に向き直した。
「あいつが居なくなったことだし、お前、あれから進展あったんか?」
「ふぇ?な、何が?」
「いやいやいや、お前が好きな人とのやがな」
彼女には好きな人がいるらしい。
どうでもいいが。
「そ、それは‥‥」
彼女は顔を赤らめた。
彼女良く顔を赤くするのは何故だろうか。
「卒業式の時に告るとか言っとったやろ?あん時から会ってへんから気になっとってん」
「え?あっ、それはその‥‥」
彼女は俯いてしまった。
「まさか告らんかったんか?」
「……コクリ」
「なんやぁ。お前見た目可愛いし、絶対告ったらOKもらえたやろうに」
「………」
彼女は暗い顔になっていた。
何かを我慢しているようにも見えた。
「相手も勿体無いことしたなぁ。こんな可愛いやつと付き合えたのによ」
「………」
「ん?どうかしたんか?」
「えっ?な、何も無いよ」
彼女は慌てて顔をあげ手をあわあわさせた。
「そないか。まぁ諦めんなよ」
「う、うん‥‥」
ご主人の励ましも虚しく彼女はまた暗い顔になった。
暗い顔を見るとこちらも悲しい気持ちになるものだ。
あの時のご主人もそうだったのだろうか。
「そんな暗い顔しなや。可愛い顔が台無しやぞ」
「‥‥うん」
彼女は無理やり笑顔を作りご主人に見せた。
「そうそう。困った時こそ笑顔に、な?」
「うん!」
彼女はこれまでにない笑顔を見せた。
「何かいい雰囲気っぽいから入れない‥‥」
部屋の外で料理を温めに行った男が困っていたことは誰も知らない。
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