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食事を終わらすと女の人は私の方に、ご主人は男の人の方に移動した。
彼女はご主人に釘を刺されたらしくあまり激しく接せず、私の肉球をいじっていた。
ご主人達は大声で『シューティングなんやら』や『希望皇なんやら』と叫んでいた。
(ご主人は何しにここに来たのかしら)
私が疑問に思うのは致し方ないことだろう。
「気持ちいい~♪」
彼女は相変わらず私の肉球を揉んでいた。
しかし、
突如また暗い顔になった。
「いいよね。彼にかまってもらえてさ。私なんかより大事してもらえてる」
私は?を浮かべながら彼女の話を聴いた。
「さっき私に好きな人がいるっていったでしょ?
それ彼のことなんだ」
(えぇ!!ご主人をぉ!?)
これはまさかだった。
あんな適当な男の何がいいのか。
「彼って凄く軽くて適当で全然頼もしくないでしょ?
でもね、すごく優しくてかっこいいの」
(確かにたまに優しいところはあるわね)
「私が進路で困っていた時彼に背中を押してもらったの」
(意外とやるじゃない)
「でもね、私凄く恥ずかしがり屋でどうしても『好き』って言えなかった…」
(まさに恋する乙女ね)
「だから私、彼に気付いてもらおうと思ったの」
(それで好きな人がいると言って気付いてもらおうとしたのね)
「けど、全然気付いてくれなくて…。私、駄目だよね。自分で言えないから気付いてもらおうなんて。図々しいよね……。」
(そんなことはないわ。多分普通なことのはずよ)
「それで、これじゃいけないって思って卒業式の時に告白するって決めたの」
(ご主人が言っていたあれね)
「けれど、いざ彼を前にしたら言葉が出てこなくなって。結局告白出来なかった……」
(‥‥‥)
「ホント!私ってダメダメだよね。あの日は凄く悔しくてずっと泣いてた。凄く、苦しかった」
彼女の気持ちは分からなくもない。
しかし、
彼女の全てを肯定は出来なかった。
どちらにも落ち度があるから。
「今日こそって思って来てはいたんだけど‥。卒業式のこと聞かれたらまた、勇気が出なくなっちゃって。どうしたらいいんだろ、私……」
一言言ってやりたい。
これほど話したいと思ったことは無い。
〈甘ったれるな〉
と。
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