猫の私とご主人の友達

7/10
前へ
/66ページ
次へ
食事を終わらすと女の人は私の方に、ご主人は男の人の方に移動した。 彼女はご主人に釘を刺されたらしくあまり激しく接せず、私の肉球をいじっていた。 ご主人達は大声で『シューティングなんやら』や『希望皇なんやら』と叫んでいた。 (ご主人は何しにここに来たのかしら) 私が疑問に思うのは致し方ないことだろう。 「気持ちいい~♪」 彼女は相変わらず私の肉球を揉んでいた。 しかし、 突如また暗い顔になった。 「いいよね。彼にかまってもらえてさ。私なんかより大事してもらえてる」 私は?を浮かべながら彼女の話を聴いた。 「さっき私に好きな人がいるっていったでしょ? それ彼のことなんだ」 (えぇ!!ご主人をぉ!?) これはまさかだった。 あんな適当な男の何がいいのか。 「彼って凄く軽くて適当で全然頼もしくないでしょ? でもね、すごく優しくてかっこいいの」 (確かにたまに優しいところはあるわね) 「私が進路で困っていた時彼に背中を押してもらったの」 (意外とやるじゃない) 「でもね、私凄く恥ずかしがり屋でどうしても『好き』って言えなかった…」 (まさに恋する乙女ね) 「だから私、彼に気付いてもらおうと思ったの」 (それで好きな人がいると言って気付いてもらおうとしたのね) 「けど、全然気付いてくれなくて…。私、駄目だよね。自分で言えないから気付いてもらおうなんて。図々しいよね……。」 (そんなことはないわ。多分普通なことのはずよ) 「それで、これじゃいけないって思って卒業式の時に告白するって決めたの」 (ご主人が言っていたあれね) 「けれど、いざ彼を前にしたら言葉が出てこなくなって。結局告白出来なかった……」 (‥‥‥) 「ホント!私ってダメダメだよね。あの日は凄く悔しくてずっと泣いてた。凄く、苦しかった」 彼女の気持ちは分からなくもない。 しかし、 彼女の全てを肯定は出来なかった。 どちらにも落ち度があるから。 「今日こそって思って来てはいたんだけど‥。卒業式のこと聞かれたらまた、勇気が出なくなっちゃって。どうしたらいいんだろ、私……」 一言言ってやりたい。 これほど話したいと思ったことは無い。 〈甘ったれるな〉 と。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加