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私達はまだ日が高いうちにご主人の友達の家を後にした。
夕飯の買い出しをしていなかったらしく、例のスーパーへと向かっていた。
昨日は全く買えなかったらしい。
彼女は名残惜しそうにしていた。
男の方が夕飯を誘っていたが「そこまで世話になるわけにはいかん」とご主人が言って断った。
「で。その話はホンマか?」
『えぇ。間違いないわ』
私はご主人に彼女の猫の話をした。
始めは驚いていた様だったが今は落ち着いていた。
「お前以外にも人の言葉しゃべれるやつがおったとはな」
ご主人は両手を頭の後ろで組んだ。
「あいつが猫を飼っとったんは知っとったけど、そんなこと一言も言うとらんかったなぁ。
まぁ言うわけないわな」
『当たり前よ』
「しっかし、しゃべれる黒猫と白猫ってまるでセーラ○ムーンやな」
『ふざけないでよ』
「すまんすまん」
(本当に適当なんだから)
今のご主人でも彼女は好きなのだろうか。
物好きと言えなくもない。
「つかなんであの時喋ってん。あんなに言うたのに。本気で焦ったぞ」
『それはすまないと思ってるわよ。でも、お蔭でいい情報が手に入ったじゃない』
「へいへい」
但し、
彼女がご主人のことを好きなことは伝えていない。
あくまでこれは彼女自身で解決すべきことだからだ。
たが、
ご主人が彼女をどう思っているのかは気になる。
『ところでご主人?彼女のことどう思ってるの?』
「ブッ。いきなりなんやねん!?」
(まさかこの反応って……)
『いいから答えなさいよ』
私は追い討ちを与えた。
「うぅ……………。
まぁえぇわ。等価交換や」
ご主人はそう言うと遠くを眺めた。
「……俺はあいつのことを好きやった」
『「やった」?』
ご主人は私の問い掛けに頷いた。
「厳密には初恋の人やった、やな」
『何かあったの?』
私は首を傾げた。
「高校の時にあいつから好きな奴がおる言うて恋愛相談受けたんや。そん時に諦めた」
(えっ‥‥‥)
「せやから、あいつのことは今はただの友達としか思っとらん。
はぁ、辛い思い出を掘り繰り返すなや‥‥まったく‥‥‥」
(……ご主人………)
ご主人はどうやら勘違いをしてしまっているようだ。
(「まったく」は私のセリフよ………)
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