猫の私と夢と過去

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ご主人の友達の家を訪れてから数日が経った。 レーナとはあれから一度も会っていない。 「はぁ‥‥」 ご主人はパソコンに向かいながらため息を一つ。 画面には○や□で出来た見たことない記号が並んでいた。 『これで10回目のため息よ。どれだけ幸せを無くしているのかしら?』 「うっさい!こっちは大学のレポート作りに集中しとるんや、話しかけんといてくれ」 ご主人は顔をパソコンからそらすことなく言った。 (仕方ないわね。終わるまで寝て待とうかしら) そう思い私は身軽に床から炊飯器が置かれている台の近くにある丸型イスに飛び乗った。 ここから炊飯器に飛び乗ってもいいのだが、五月蝿くしないためやめておいた。 私はご主人の方を向きながら寝転んだ。 ご主人は作業に没頭していた。 (気にかけてくれないのはやっぱり寂しいものね) 私はそっぽを向きご主人が叩くキーボードの音を聞いていた。 ふと、 私は窓の外を見た。 薄暗く雨が窓を叩く。 しかし、 それは音だけで簡単に勢いを無くしゆっくりと窓をつたって落ちていった。 私はそれを見て余計に虚しい思いにかられた。 私にはその雨が私のように思えてしまったのだ。 打ち付ける粒は自らを中にいる人に気付いてもらうため音をたて、しかし中にいる人は気付かず否、気に掛けず粒達は力無く落ちていく。 滴は窓から床へ、床から溝へ流れ最終的に地面へ落ち染み込んでいく。 しかし、 私にはそんな受け入れてくれるものなどなくただただ溜まっていくだけ。 今頃ウサギなら死んでいるのだろうか。 (私らしくないわね) 私は沈んでいた自分に渇を入れ、本来快楽である睡眠を身を委ねようとした。 が、何故かその時に限って今いる場所が冷たく無機的なものに感じた。 ただ、 何と無く理由は分かっているように思えた。 (自分でも知らない内に自分の中にご主人がいたってことね) 私はその場から身を起こし床へと飛んだ。 そして、 まだ私に気付かないご主人の脇へ潜り込んだ。 ご主人は少し肩をビクッとさせたがすぐに受け入れ足を組み直した。 私はご主人の胡座の上に座り込むとご主人は軽く私を撫でて作業に戻った。 私には今いる場所、更に撫でた手さえ暖かく感じた。 (あの時と一緒ね……) その後いつ寝入ったのかの記憶はない。
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