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『ホントだ~~!!!!!』
私はつい大声をあげた。
人の言葉を理解出来ていることでさえ驚いたというのに、まさか喋ることまで出来るとは。
私はふと周りを見渡した。
相変わらず雨は降っていたが幸いあの男以外人はいなかった。
もし猫喋っている所を他の誰かに知られ噂になれば面倒なことになる。
(ふぅ‥‥。まぁまずは一安心ね)
で、
例の男なのだが……。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
雨で道路濡れているにも関わらず全力で私に向かって土下座していた。
(何で私こんなのを恐れていたのかしら)
先ほどの恐怖はどこへいったのやら。
一瞬にして立場が逆転していることに少し呆れたが私の中で何かのスイッチが入ったような気がした。
私はニヤリとすると男に向かって言葉を投げかけた。
『ちょっとあんた!』
「っ!!!」
少し強めに声をかけただけでビビっている男を見て、私は完全にスイッチが入った。
ドSの。
『私がこんなに濡れているにも関わらずあんただけ傘の恩恵を受けているのはおかしいんじゃないの?』
私は完全に男を罵り蔑み見下す眼を向けた。
男は「はいぃ!!」と声上擦らせながら傘を私頭上に動かした。
その時の男の『逆らえば喰われて殺される』と言わんばかりの顔は一生忘れまい。
『はぁ、あんたのせいで濡れちゃったじゃない。あんたの家で洗ってもらうわよ』
「はいっ!!喜んで洗わせて頂きます」
野良猫として何かと居場所を作っておいた方が便利だ。
雨宿りする場所を確保する事が出来る。
実はさっきいた場所は一時間程歩いて見つけた。
それに恐らく、否確実に命令すればこの男ならご飯を用意してくれるはずだ。
『じゃあ、案内しなさい』
「はい!!喜んで!!」
男はそう言うと私に一滴も当たらないように中腰になりながら歩き出した。
周りから見たらどれだけシュールだっただろうか。
しかし、
ここで私はミスを侵していた。
それに気付かず私は男について行った。
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