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10分ほど歩くと小さなマンションに着いた。
ここがこの男の家らしい。
男はよほど無理をしていたのだろう、着いた途端体を思いっきり反らした。
『さっさとしなさいよ』
と声をかけると、
「了解であります」
と一言だけいい中に入り階段を登り始めた。
(ん?)
その対応に疑問を持ちつつも男に合わせ階段を登った。
二階に上がり右に曲がってから手前から2つ目の扉の前で男は止まった。
おもむろにポケットから鍵を取り出し扉に挿した。
ガチャン、と音がし扉が開いた。
私はすかさず中へと入った。
中は思ったより大きく綺麗に整頓されていて、というより異様に大きいソファと必要最低限の家具しか存在していなかった。
その辺にあったタオルで足裏を拭くと、
『さっさと体を洗いなさい。それに虫のせいで体がかゆいのよ』
と言いながら男を見た。
縮こまっている姿しかちゃんと見ていなかったせいか男がやたらと大きく見えた。
「それでは‥‥‥。」
男が呟く
と同時にル○ンもビックリなスピードでパンツ一丁にながら私に飛びついてきた。
『ギャーーーーー!!』
またもや突然のことで叫ぶことしかできなかった私は目にもとまらぬ速さで風呂場に着いた。
風呂場は玄関から少し歩いて右側にある。
距離推定3m。
この距離を約半秒で移動したこの男、一体何者‥‥。
風呂場に着き男は私を見下しこう言い放った。
「はっはっはっ!。形勢逆転や!!俺に落ち着きを取り戻す時間を与えたのは失敗やったな!!
さて、大人しく俺の猫になってもらおか」
そう、
私の唯一の失敗
それはこの男に時間与えたことである。
この10分でこの男は目の前の非現実を受け入れてしまっていたのだ。
(適応能力高すぎでしょ‥‥。)
男はスライド式の扉を閉めた。
今私は退路を断たれてしまった。
逃げるにはこの男を倒さないといけない。
不幸中の幸いか男ほぼ全裸だ。
どこかを引っ掻けばこちらにも勝機はある。
私は尻尾を立て威嚇する体勢をとった。
それを見て男は簡単な構えをとった。
二回目の静寂が訪れた。
一向に動く気配はない。
すると何故か風呂場のシャワーから水が落ちた。
それは真っ逆様に落ち床に跳ねた。
それは戦いのゴングでもあった。
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