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第1章 「救出」
逃げていた。必死に人目に付きそうに無い路地裏を全速力で走っていた。
いちいち、どこに向かうなどと考えずただひたすらに走り続けている。
何度か転びそうになったが、そんなことは気にしていられない。時々、後方を確認しながらとにかく移動している。
見た目は10歳くらいの女の子で、緑色のTシャツの上から茶色のジャンパーの様なモノを羽織っている。
下はスカートにニーソックスを履いている。髪は透き通った金髪で、目は赤いルビーのようだ。
顔立ちも良く、後4・5年でモデルになれそうなくらいだったが、その女の子が持っているモノは今の女の子にはどう考えても似合うモノでは無かった。
銀のアタッシュケース
普通のよりも一周りり大きいソレを、10歳くらいの女の子が大事そうに抱えながら走り回っていれば、誰だって
何事だ?
と思うだろう。
実際、何人かは声を掛けて事情を聞こうとしたが、その前に走り去ってしまった。
しばらく走り続けると、息を切らしながら周りを確認する。
誰もいないと分かると、壁に寄りかかりしばらく休む事にした。
壁に寄りかかった女の子は、そのまま床に腰を降ろし肩を上下させながら苦しそうに呼吸している。
かなりの距離を慣れない足取りで30分くらい走ったので、足は限界に近かったがいつまでもここにいる訳にはいかない!!
アイツらは、どれほど残酷な手段を使ってでも自分を見つけ出し、このケースを奪おうとするだろう。それだけは防がなければならない、絶対に!!
例え自分がどうなろうと、このケースだけは守りきらなければ大変なことになる。
捕らえられても、殺されるくらいなら命を掛けて守り抜く。それが自分の成すべき事なのだから。
とりあえず呼吸を整え、安全な場所を探して暫く休んでから……
「見ぃつけたぜぇ~、逃げ足ぃの速ぁ~い子猫ちゃぁんよぉ!!」
どこからともなく聞こえた声に体が一瞬硬直した。
直後、すぐに走り出す。
そう、のんびり休んでヒマなどは無い。
死の恐怖がすぐそこまで迫って来ている。ゆっくり休むことなど自殺行為に等しいのだ。
とにかく、声が聞こえた場所から遠く離れた所に行かなければ!!
複雑に入り組んだ道をひたすらに走り続ける。
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