オープン戦

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<――西武ウルフズ、選手の交代をお知らせします。バッター、加藤に代わりまして、代打、樫琶。背番号5> ウグイス嬢が剛紀の名を告げると、スタンドからは今日一番の大歓声が沸き起こった。 「いよっ!待ってましたっ!」 「ホームラン見せろよー!」 「頑張れよー!黄金ルーキー!」 ベンチから駆け足でグラウンドに出ると、球場全体の視線は全て剛紀に集まる。 剛紀は、大観衆を気にしながらも、アンパイアに一礼をし、打席に入った。 初の対外試合、プロの対決。 しかし、そんなことも関係なく、バッターボックスで威風堂々と構える剛紀は、不安より喜びや楽しみな感情のほうが勝っていた。 ファンの声援にも、球場の雰囲気にも呑まれず、程良い緊張感を保っていた。 「(……なんだ、甲子園決勝に比べたら、これくらいなんともないな)」 余裕すら見せる剛紀は、自分の間を作り出し、相手投手の投球を待った。 「(初球、インロー変化球に絞ってスイングする)」 剛紀には、高校時代から初球の配球だけは山を張るクセがあった。 それは、データに基づくものから根拠のない直感まで。 狙い球、甘い球がくれば確実に仕留められる確実性も兼ね備えたパワーヒッターの剛紀が編み出した、ジンクスのようなものだ。 とにかく、それは剛紀の才能に他ならないのであった。
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